子連れLSE留学記(英国大学院留学)

2020年から子連れでLSEに留学している筆者の記録

18 MT振り返り③(Politics)

いろいろと波乱含みだったPP478 Political Science for Public Policy。

 

トピックは、国家とは何か、民主主義と権威主義、民衆蜂起、権威主義の形態、民主主義の形態、選挙システム、選挙での説明責任など。こちらは他の2つの必修と違い、学部で政治学を学んでいても免除はなし。また、基本書のようなテキストが指定されているわけではなく、トピックごとにテキストや論文が指定されてそれを読むというもの。

 

授業の基本的な流れは、事前にHPにアップされている講義のビデオ(1時間~1時間半)を視聴し、Zoomを使ったオンライン形式でのライブQ&Aセッションを1時間、翌週のゼミ(キャンパスでの対面・1時間半)でトピックについて議論したり、グループプレゼンテーションを実施したりというもの。

 

グループプレゼンテーションは、希望するトピックを各自2つ選んで、それに応じて3・4人のグループに分けられ15分以内で実施する。トピックごとにお題が与えられているが、基本的には、一つ国を選んでその国での政治的動き(選挙制度改革)などを分析・評価せよという形。

以前も書いたが、このグループでの議論というのに相当苦労させられた。英語力の問題が一番ではあったが、私はこれまでの教育や仕事のやり方を踏まえて、「正解」を意識しながら進めていたが、「面白くない」という理由で意見を退けられたりするのは、新鮮だった。

プレゼン自体のスライド作成・発表自体はいろいろ調べながら進められるし、評価自体はグループに対して行われるもので、それほど悪いものではなかったが、やはりグループでの議論にどう貢献していくかというのは大きな課題であった。振り返ってみれば、何を話すかよりもどう話すかをもっと意識するべきだったかもしれない。英語が下手な奴が如何にも自信なさげにぼそぼそしゃべると端から聞いてもらえないという部分はあっただろう。

 

この授業については、クラスメイトの多くが不満を持っていたが、その要因は主に以下の二つ。一つは、政治学の授業なのにディスカッションがほとんどないという点。最初聞いたとき、Q&Aセッションがあるじゃないかと思ったが、彼ら曰く質問したいのではなく、議論をしたいのだと。これだけいろんな国の出身のクラスメイトがいるんだから、それぞれのトピックについて、お互いの国の事情を知りたいとのこと。これは確かに一理あるなと思った。ゼミでも講師が「〇〇とは何か」とか事前に読んだ論文の内容を知識として確認するようなやりとりがほとんどを占めていた。理論として、例えば、選挙制度には多数代表と比例代表があって、多数代表にはこういう長所があって~と習うのも悪くはないが、正直、高校生の政治経済や現代社会の延長にすぎないという感は否めない。

二つ目は主にインドなどアジア出身の学生から、トピックごとの説明が西欧の文脈でばかり説明されているというもの。インド出身のクラスメイトの一人はブログで「もっとインドから学べ」という趣旨の発信をして、インド出身の他のクラスメイト達から熱烈な支持を受けていた。他のクラスメイトもそこまでは言わずとも、卒業後はアジアで仕事をするつもりだから、アジアのことをもっと学びたいと不満を漏らしていた。これについては、西欧の方が、例えば、議会制民主主義の歴史が長いわけだし、その分、研究成果も蓄積されているので仕方がないのではないかなとも思う。

また、政治学固有の問題として、学者は、ある国で見られた政治現象を理論化して一般化しようとするわけだが、完全な一般化は難しいというところに行きつくのではないかと思う。経済学にも近い問題はあると思うが、あちらは理論・モデルの研究に軸足がおいてある印象だ。政治学はもっと現実の問題を扱っている分、結局、個別の国の特性の問題に帰着してしまう。

 

それにしても、胸を張って「インドから学べ」と主張できるインドの若者が眩しい。