子連れLSE留学記(英国大学院留学)

2020年から子連れでLSEに留学している筆者の記録

62 LSE・MPA(キャップストーンプロジェクト③)

キャップストーンプロジェクトについての振り返り。内容面について。

 

私たちのグループのクライアントはDfE、英国教育省で、テーマは、2030年に向けて特に低所得者世帯に対する幼児教育をどのように発展させるべきか、というものであった。

これは私自身、ロンドンで子どもを保育園に通わせて痛感していたが、とにかく、英国の保育料は高い。週5フルタイムで預けたら家賃と同じぐらいの保育料がかかる。3歳以上になれば、一律で週15時間年38週間まで無料、働いていれば追加で週15時間年38週間無料となるので多少ましだが、3歳未満の場合は原則補助がなく、低所得者世帯に限り週15時間年38週間まで無料となっている。補助があるとは言え、週15時間に過ぎないので、低スキル・低所得層ほど働いて子どもを保育園に通園させるより、家庭保育をした方が経済的ということになる。

 

クライアントが英国の政府機関ということで、苦労した点が2つ。1つはとにかくレスポンスが遅い。忙しいのは分かるが、こういったデータを提供してもらえるか、と聞いても反応がないこともしばしば。他のグループではクラアントとのミーティングが毎週のようにあってすごく大変という嘆きを聞いたので、結局、ないものねだりのところはあるが、クライアントからのコミットメントが浅くても深くても苦労するという印象だ。結局データがなかなかもらえないし、督促しても時間を空費するだけになりそうだったので、急遽、当初は予定していなかった保育事業者へのインタビューなどを実施することになった。このあたりはスーパーバイザー(指導教官)と相談しながら進めたが、しかし、どうも行き当たりばったり感が否めず、とりあえずインタビューしてみたけど、これどう生かすの?という空気がグループ内に生まれたりしていた。

 

2点目は、既存の政府資料をどのように自分たちの報告書に織り込むのか、グループ内でなかなか合意できなかった点だ。2030年に向けて、というテーマなので、現状分析をした上で将来の傾向分析をして提言をするという流れまでは全員が合意できたのだが、問題はどこに重点を置くか。私を含め何人かは、現状分析を重視する立場。私は、将来の傾向なんて予測するのにも限界があるのだから、保育だけでなくuniversal credit(日本でいう生活保護)など低所得者世帯支援全体の現状をしっかり整理して、それがどう機能してどう機能していないのかをまずは分析するべきと主張したのだが、残りのメンバーは将来分析を重視していた。曰く、統計などから分かる現状はクライアントは認識しているはずで、それを報告書の中心に置いても新鮮味がない、ただでさえテーマが広範にわたるのに、保育以外の部分に手を伸ばすべきではない云々。結局、保育以外の低所得者支援は付録という形で末尾に簡単に現状を触れるだけになったが、成績とともに受け取ったフィードバックでは、巻末にあったuniversal creditなどは本文で中心に置かれるべきだったとコメントされ、歯痒い思いをした。英語で相手が何を言っているのかを聞き、自分が何をしたいのかを伝えることは最低限のレベルでなんとかなったが、その一歩先の自分の主張を補強して相手を説得するというのがほとんどできなかったあたりが、自分の語学力の限界であり、反省点だ。

 

他の科目でもそうだが、フィードバックでここが弱い、もっとこうするべきだったという指摘は的確で耳が痛く、もっとここをこうすればよかったなと言うことばかり感じたが、それでも評価はMeritだったので、良しとする。