子連れLSE留学記(英国大学院留学)

2020年から子連れでLSEに留学している筆者の記録

はじめに

機会をいただき、所属組織からの派遣という形で2020年9月からの約2年間、英国の大学院に留学させていただくことになった。
進学先はLSE(The London School of Economics and Political Science)のMPA(Master of Public Administration)という英国では珍しい2年間のコースで、公共経営修士の取得を目指して勉強する。

 

このブログを開設した主な動機は2つで、1つは、留学中の時々の自分の感情・思考を整理し記録することで、自分の現状を相対的に把握するとともに、ここで得た学びを後日振り返られるようにすることだ。

ただ、それだけであれば、公開のブログという形をとる必要は全くないわけだが、私自身、留学を志してから実際に渡英するまでの間(そして渡英後も)、多くの諸先輩のブログに大いに助けられたこともあり、私の拙い文書でもこれから留学を考えている方々の一助になればと思い、この形を取ることにした。

 

また、ブログタイトルにも入れたが、パートナーと未就学児2人を連れて渡英している。旅行を除けば、初めての海外生活、それも子どもも連れてとなると、いろいろ苦労もあるだろうが、生活者として様々な気づきも得られるだろうから、楽しみでもある。

可能な限り、大学院での勉強だけでなく、ロンドンでの子育てについても記録していきたい。

 

留学を機にブログを開設にしようと思いつつ、1か月以上かかった有様だが、なるべく定期的に更新したいと思う。

23 reading week

つい数週間前まで雪が舞ったり、最高気温0度だったりとかなり寒かったが、先週あたりから最高気温が10度を超えだして、かなり暖かくなってきた。2月16日はパンケーキデーと言って、復活祭(イースター)前に40日間行う断食に備えて、牛乳や卵を消費する(あるいは滋養をつける)日だったようで、長子はナーサリーでパンケーキを食べてきたようだ。長かった冬もあともう少しの辛抱という時期なのだろうか。

 

早くもLTも折り返しで今週は前学期同様、reading weekとなっている。ただ、これも前学期同様、PP455の授業だけは変わらずあるので、結局月曜から水曜までは毎日1・2時間程度授業がある。全科目足並みをそろえてほしいというのが正直な感想。

 

そのうえ、3月中に〆切のある課題について、ありがたいことにreading week前に発表が行われたので、ロックダウンしているかどうか関係なく、MTのreading weekほどはのんびりできない気がする。

 

課題はざっと以下のとおり。

PP455:

World BankのEnterprise Surveyから任意のデータを参照して分析を行い、興味深い発見をしてA4・4枚以内でレポートをまとめよ

PP440:

任意の国を選んで、そこに新しく着任した財務大臣に報告する形式で、マクロ経済における主要な3つの指標の長期・短期の状況を説明するとともに、新型コロナウィルスのパンデミック終焉後に予想されるマクロ経済上の懸念についてA4・2枚以内で説明せよ

WAM:

与えられた教育や職業に関する図表について解釈を述べよ(試験問題のような感じ)

 

PP440は前学期と同様だが、PP455の方はこれまでのとは少し毛色が違う。どのデータをどう分析するかを決めるまでが結構大変そうな気がするが、これこそ実践的だという気もする。しかし、残念ながら日本のデータはないので、どの国のデータを使うところから少し考えないといけない。

 

このほか、先日から行っているPP478のpolicy memoがあり、また、3月にはPP478でプレゼンを2回行う必要があるので、その準備も進めていくという状況だ。こういうとき、もちろん理想は一つずつ集中して片づけていくことだが、昔からそれが苦手で、一つのことをやりながら他のことも気になるという質なので、正直、ちょっと憂鬱だ。もっとも、それも鍛錬だと思ってやるしかないのだが。

 

 

英国(人口約6,600万人)での新型コロナウイルスの新規感染者数は、1月上旬は1日当たり5万人超、死者数も1,000人超という日が続いていたが、直近では新規感染者も1万人程度、死者数も数百人というところまで落ちてきている(なお、累計感染者は400万人超、累計死者数は12万人超)。

また、ワクチン接種も12月から始まりだして、現在のところ医療・介護従事者と70歳以上の高齢者計1,700万人が接種完了、4月中旬までには50歳以上の全員+基礎疾患などがあるハイリスクの若者に接種をするという予定とのこと。

 

この勢いなら早々にロックダウンを解除するかなとも思っていたが、本日(22日)、ジョンソン首相から発表された出口戦略では、3月8日から子どもたちが(オンライン授業から)学校に戻っていいとされた一方で、必要不可欠な業種以外の業種の営業再開は4月以降、屋内で6人以内が集まっていいのは5月以降、完全規制解除は6月以降とかなり段階的に緩めていくことになっている(詳細はこちらを参照)。

What's the roadmap for lifting lockdown? - BBC News

 

現在、3度目のロックダウンをしているわけだが、これを最後のロックダウンにする(後戻りしないようにする)ということだろう。しかし、これからどんどん暖かくなっていくと、市民の気が緩むというか、我慢も限界にならないか心配だ。現に、1月に積雪があったときには、雪合戦を企画して30人以上の人を公園に集めた若者が1万ポンドの罰金を命じられたと報道があった。

 

結局のところ、人間は非合理的な存在だから、科学的に正しいとされたことを全員が全てそのとおりに実践できるわけではないし、いくら刑罰を科したところで他人の行動を制限するのは一定の限界がある。科学的な正しさと社会生活との接点を見出していくことがpublic policyに求められることであり、私がここで学んでいる意味なんだろうなと思いつつ、とりあえず、そのことと直接つながっているのかどうかはよく分からないデータや論文とにらめっこをしている。

22 余暇

選択科目として履修している"Welfare Analysis and Measurement", 通称(WAM)。先学期は所得の分析を行っていたが、今学期からは所得以外、職業などのステータス、資産、教育・スキル、Social Capitalなどを扱ってきたが、今週扱ったのが表題にした余暇。

 

全ての人が1日24時間しかない中で、その時間をどのように使っているのか、という問いは古くは労働経済の視点から、そして近年では幸福・健康の視点で注目されている。程度の差はあるが、先進国に共通するのは、労働市場で働く時間は減ってきているが、その分、家事育児など家庭内で働く時間が増えている、男女で見ると女性の方が家事時間が長く、男性の方が余暇が多いという傾向のようだ。

 

授業で扱った論文には、あいにく日本のデータが含まれていなかったので、少し調べてみた。総務省統計局が実施している「社会生活基本調査」の「生活時間に関する調査」がそれに該当する(なお、余談ながらこちらの統計は英語版もHPで公表されていたのに論文で一切扱われていなかったのは残念)。

https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/pdf/gaiyou2.pdf

 

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「仕事」もそうだが、「家事」と「趣味・娯楽」の男女差が顕著だ。自分の家庭や両親のことを顧みても納得の傾向だ。男性の「家事」時間がこの20年で90%増とはいえ、女性の5分の1以下。「家事」に「介護・看護」「育児」「買い物」を加えた「家事関連時間」で見ても1996(平成8)年が男性24分、女性3時間34分だったのが、2016(平成28)年で男性44分、女性3時間28分と差は歴然。ちなみに有配偶者のみで比べると男性49分に対し女性4時間55分と専業主婦の存在を考慮しても圧倒的に女性の方が家事関連に時間を費やしている。末子が6歳未満の夫婦の家事関連時間は差がさらに広がるのだが、引用はこのくらいにしておく。

 

この結果を見て思い出したのが、noteで公開されていて、つい先日読んだ「母親の新しい孤独について」と題するエッセイ。子どもを持つ・持たないという区別だけではなく、子どもを持ちながら持たない人のフィールドで道を模索する母親の孤独を語っている。子どもを持ったとたん、子どもを優先するのが当然という風潮の中で、ひとりの女性として自己実現をしようとする苦しさが書かれていて胸を打たれた。

 

数年前に社会現象を巻き起こして、今年スペシャルドラマが放送された「逃げるは恥だが役に立つ」の原作者が続編を書いた理由として、「女性の呪いについては描いたけど、男性の呪いについては描いてなかった」、誰かが書いてくれたらいいかと思っていたが、結局自分で描くしかないということになったと述べていた。あの作品の中では、母親・父親というのにそこまで焦点を当てていなかったが、その言を借りると「母親の呪い」はまだまだ強固にある。職場の飲み会に母親が来ていて、「子どもはどうしたの?いい旦那さんだね」と言われることはままあるだろうが、父親が来ていて、「子供はどうしたの?いい奥さんだね」と言われることは皆無だろう。

 

「12歳までに「勉強ぐせ」をつけるお母さんの習慣」(楠本佳子)という本を昔読んだが、その中で印象的だったのは、子どもにあまり口出しをするな、母親も子どもほったからして趣味とか何か打ち込めるものに時間を割け、その背中を見て子どもが育つという話で(タイトルはなぜ「お母さん」だけなのかと噴飯ものだが)、なかなか正鵠を射ていたと思う。

 

専業主婦家庭・長時間労働を前提として、女性は何よりも母親であることが求められ、父親はほぼ全ての時間を会社に捧げて、家庭での居場所を失っていく。そんな社会からいまの私たちが生きる社会は変わってきているけれど、まだまだ過渡期で、残滓に苦しんでいる人が多くいる。願わくは、子どもたちにはもっと生きやすい社会を。

21 policy memoについて

新型コロナウィルスの影響で、政治学の今年の成績評価はプレゼンとエッセイ(policy memo)だけで行われることになっている。聞いた話だと試験では、授業で取り扱った主要な政治理論に関して、学者名・論文の発表年をひたすら暗記をする必要があったようなので、正直、試験が行われないというのは非常にラッキーだと思っている。

 

policy memoは、ざっくりいうと特定の国の政策課題を一つ選んでその課題の分析と解決策の提案を2500wordsでまとめろという、おそらくかなり基本的な形だ。もっとも、これまでIELTSの英作文ぐらいしかしたことのない私からすれば十分に高いハードルだが。最終的な提出期限は3月末だが、昨年の間に選んだテーマについて1パラグラフ程度のメモを書いて、そのテーマで進めてよいかどうかのチェックを受けていた。そして、今月中に再度途中経過を提出してfeedbackを受け取るというプロセスになっているので、ここ1週間ほどいろいろ調べ物をしてまとめている。

 

私は、日本における男性の育児休業取得率が極めて低いことを政策課題として選んで進めているが、制度を調べていて改めてその複雑さに驚く。

母子手帳交付や産前産後の健診、両親学級などは「母子保健法」、産前産後休業は「労働基準法」、産前産後期間中には給与に代わるものとして「健康保険法」に基づく出産手当金が、出産に関する費用の補填として同法に基づく出産育児一時金の支給、育児休業や育児を理由とした時短勤務などは「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」、そして育児期間中の育児休業給付金は「雇用保険法」、産前産後休業や育児休業期間中は健康保険料・厚生年金保険料が「健康保険法」と「厚生年金保険法」に基づき免除される。ついでに、出産などにかかった費用は、「所得税法」上の医療費控除の対象になる。(※いずれも、雇用されている労働者(いわゆる会社員)の場合で自営業者などの場合は若干異なる部分もある)

私も二児の親として制度を利用してきたのでなんとなくこういうのあったよなと調べていったが、初めて親になる人が一から調べようと思うとなかなか大変だ。各種制度が様々な法律に分かれているのはそれなりに理由のあることだからそれはいいとして、問題は情報発信の在り方だ。例えば、「育児休業」とインターネットで検索して上位に表示される厚生労働省のページがこちら。

 

www.mhlw.go.jp

 

レイアウトのこととか突っ込みどころはいろいろあるが、何よりこのページを見ても、育児休業給付金の話が全く出てこない。育児休業に興味を持って調べた人は平成21年にどんな改正が行われたかよりも、育児休業中の給料がどうなるかの方が気になるのではないだろうか。一事が万事この調子で、結局、法律の説明はしているが、ある人が特定の場面(今回は子育て)でどういう制度を使えるのかという説明にはなっていない。

会社員の場合、人事から説明があるからとか、子育てに関する情報をまとめている民間のHPがあるとか、それは言えばそうなのだが、肝心の厚生労働省のホームページがこれでいいのか…

 

ちなみに、介護休業に関してはこういった特設ページができていて、お金をかけている感じがする。育児休業もせめてこれくらいしてくれないものか。

www.mhlw.go.jp

 

本当はちょうど旧正月を迎えた中、11月にはあれほど"Happy Diwali"や"Thanksgiving"とかまびすしかったwhatsappに"Happy Lunar New year"や"Happy Chinese New year"とは1回も投稿がなかったことに関して感じたことも書こうと思ったが、長くなったのでこのあたりで。