子連れLSE留学記(英国大学院留学)

2020年から子連れでLSEに留学している筆者の記録

31 LT振り返り(Economics)

PP440 Micro and Macro Economics (for Public Policy)

 

LTからはマクロ経済学で講義を行う教授が変わったが、基本的な進め方はMTと同じだった。

学んだ内容は、端的に言うと、長期(5~10年)と短期(1~2年)それぞれの経済成長率・金利・失業率に関する理論だ。長期では、ソローモデルに従い、全要素生産性と一人当たり資本によって一人当たり所得が決定されるが、一人当たり資本は定常状態に収束するので持続的な経済成長の鍵は全要素生産性となる。金利は、貯蓄と投資の均衡によって実質金利が決定され、失業率は、自然失業率(s/s+f)に収束する。一方、短期では、GDPは、AD-ASの均衡で決定されるため、金利操作による消費や投資の変動、政府支出の影響を受ける。金利は、中央銀行による名目金利操作によって変動し、失業率はインフレ率とトレードオフの関係になる(フィリップ曲線)。また、フィッシャー方程式は、長期では、実質金利が固定されるため、名目金利はインフレ率に影響するが、短期では、インフレ率が固定されるため、名目金利が実質金利に影響する。同様に、貨幣数量説(MV=PY)は、長期では、GDPが固定されるため、貨幣量はインフレ率に影響し、短期では、インフレ率が固定されるため、貨幣量はGDPに影響する。

他にも、信用創造やテイラールールなどを習ったが、試験前にゼミの講師が前述の8項目(長期・短期それぞれの経済成長・金利・失業率・フィッシャー方程式・貨幣数量説)を強調していたので、全体でのキーポイントはこれだったと思う。

 

また、ミクロ経済学と違い、講義の中で実際の経済データが紹介されていたので、クラスメイトの評判も良かったように思う。

昨今、国際的な日本の地位はすっかり下がったと感じていたが、日本のデータがアメリカや他の国のデータと並んで紹介されていると、内容はどうあれ、腐ってもまだ経済大国なんだなと実感した。

毎週の課題も、MTは”架空の島Xの名産であるオウムとその鳴き声による外部性”みたいななんだかよく分からないテーマが多かったのに対し、LTでは実際の国のデータを用いたものもあり、クラスメイトが「もう訳のわからないオウムのことは考えずにすんで嬉しい」と笑っていた。

 

学期末にはMTと同様Policy Memoの提出が求められたが、”あなたの国に新しく着任した財務大臣に、その国の経済指標について長期・短期で説明し、その上で、パンデミック終息後に失業率の悪化とインフレのどちらを懸念するか述べよ”という内容で、ここでもMT以上に実際のデータを使うことが強調されていた印象だ。

 

ロックダウンの影響でLTから母国に帰国する学生が一定数おり、学生のいるタイムゾーンの変化に伴い、セミナーの割振りが大幅に変わったが、毎週の課題を一緒に解くセミナー内のサブグループの割当てがなかなか発表されず、前学期に同じグループだったクラスメイトたちと自主的に毎週オンラインで答え合わせのようなことをしていた。結局、正式なグループ割当ては学期が終わるまで行われず、多くのクラスメイト達がグループではなく個人で問題を解いていたようだ。そんな中、MTから同じメンバーでしかも自主的にグループワークができ、学期が終わった後にオンライン飲みをしたりと、なんとなく絆が芽生えたような気がしてよかった。

 

ちなみに、マクロ経済学の講義では教授が、毎回授業開始までの数分間に、様々な国の音楽を流して学生を楽しませていたのだが、たまたま授業があった3月11日に流れた音楽が日本の曲だったのは嬉しかった(他の学生は気づいていないようだったし、選曲もなぜかボカロ曲だったが)。