子連れLSE留学記(英国大学院留学)

2020年から子連れでLSEに留学している筆者の記録

10 NIKEのCMを見て感じたこと

ネットで話題になっているNIKE Japan のCMをYoutubeで見た。

 

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 東京大学大学院の鳥海准教授がTwitterを分析したところによると、このCMに対する反応は、①CMへの肯定的意見(感動した)、②CMへの否定的意見(日本人が差別をしているように見える)、③NIKEへの批判的意見(中国での強制労働等)に大別できるという。

NIKEのCMに対してはTwitter上では大きく3つの意見が存在した(鳥海不二夫) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

このCMそのものあるいはその反響について、ここで私の考えを述べたいわけではないが、これを見て思い出したことがある。

 

LSEのWelcome week中に参加したsocial activityの1つで、Policy issuesについて4・5人のグループに分かれてそれぞれの意見を言い合おうというものがあり、3つあったテーマのうちの1つがあなたの国における"Systematic racism"(構造的人種差別)についてだった。

正直、このテーマをぱっと見たとき、Systematicって何だ?制度上の差別?と頭の中が?でいっぱいになった。他の同級生たちも似たような状況だったのか、インド出身の人がカースト制について語った以外はなぜかジェンダーの話をする人がいたりと話が深まらなかった。

ただ、その後、少し時間をおいて考えると、外国人であることを理由に賃貸借契約を断られる在日外国人、親が外国人で外見が日本人と異なるために警察官から頻繁に職務質問を受けたり在留証明書の提示を求められる日本国籍保有者、劣悪な待遇で労働を強いられる外国人技能実習生などいくらでも例はあったことに気づくとともに、その場でそうしたことに思いが至らなかった自分を恥じた。

 

 

MPAで勉強する中で、自分の教養のなさというか視野の狭さを痛感することが多々ある。ベラルーシの暴動なんて全然知らなかったし、香港のデモぐらいは知っていたけど、チリの新憲法制定の話も初耳だった。知ろうと思えば日本語でも情報がないわけではないので、知ろうと思うことさえしていなかったということだ。

 

 

少し違う話になるが、ロンドンに来ていたるところでホームレスを見かける。スーパーの出入口、駅の出入口は当たり前で、ときには電車内で少額でもいいから金をくれと言いながら車両を移動している人もいる。東京ではまず見かけない光景だが、OECD貧困率(2015)を比較すると日本が15.7%に対して英国は10.9%と、統計上はむしろ日本の方が貧困率は高い。

それにもかかわらず、なぜこうした違いが現れるかについて、日本は、公園など無料で水・トイレが利用できる場所があり、かつ乞食行為が法律で禁止されているし文化的にも許容されていないから、とかそれっぽい説明はネットで見つけたが、実際のところはよくわからない。

 

ただ、ロンドンでホームレスの横を無言で通り過ぎるときに少しばかり罪悪感を覚えながら、ホームレスが見えるところにいながら気にもせず多くの人が通り過ぎて暮らしている社会と、ホームレスがほとんど視界に入らずあたかもホームレスなんていませんという顔をして多くの人が暮らしている社会、どっちが健全なんだろうなと考えている。