子連れLSE留学記(英国大学院留学)

2020年から子連れでLSEに留学している筆者の記録

60 成績発表

7月14日に成績が発表された。

卒業式が7月21日なので、直前でやきもきしていたが、特に問題なく卒業できそうだ。ブログを見返すと、昨年の成績発表もほぼ同じ日付なので、卒業式直前に成績発表というのが通例のようだ。

 

私がメールを確認して成績を見たのはその日の夜だったのだが、whatsappの流れを見ると、どうやらその日の午後から順次メールが送られてくるというシステムで、アドミッションオフィスのスタッフがリストを見ながらアルファベット順に一人ひとりメールを送ってるんじゃないかというので盛り上がっているのが面白かった。

 

相変わらず、自慢できるような成績でもないのだが、1年目同様2年目の成績も晒しておく。

PP4B3(Capstone Project) : Merit

PB422 : Distinction

PP4J5 : Merit

PP419 : Merit

GI414 : Merit

PP4E5 : Merit

GI415 : Merit

1年目と合わせて2科目のみDistinctionであとは全てMeritで最終のclassもMeritとなった。他のコースだが、日本人でもDistinctionを連発している人がいるそうなので、この成績の微妙さはひとえに私の能力・努力不足に帰せられるものではあるが、そもそも入学当初は単位落としたらどうしようと怯えていたほどなので、個人的には十分だ。2年前の自分にそれなりに真面目にやればMerit以上は取れるから安心しなと言ってやりたい。

 

成績も発表され、留学期間中のイベントとしては残すは卒業式のみ。このブログもそろそろ終わりが見えているところではあるが、備忘のための振り返りでもう少ししておきたいこともあるので、もうしばらくは更新を続ける予定。

59 LSE/MPA2年目・LT振り返り③(PP4E5)

PP4E5 Innovations in the governance of Public Services Delivery

 

2年目LTで唯一のSPPのコースでMPPの学生とMPAの1年目が多かった印象。以前の記事で書いた通り、当初は履修予定にはなかった。というのも、講義名の最初のイノベーションという単語でてっきり科学技術をどうガバナンスに組み込むのかという話だと思い込んでいたからだ。

しかし、扱うメインの内容は、講義名から言えば、むしろ後半の公共サービスの提供の問題。イギリスでは1980年代のサッチャー政権、日本では2000年代の小泉政権のときに持て囃されていた政府サービスの市場化、どのようなサービスは市場化すべきでどのようなサービスは市場化すべきでないのか、あるいは市場化に替わる効率的なサービス提供のあり方についてどのようなものがあるのか、というのが中心的なテーマだった。

 

前半は、CoaseやWilliamsonのモデルから、政府にとってmake(直接提供)とbuy(市場化)のどちらがいいかを不確実性・サービスの固有性・情報・取引頻度・関係性(交換に馴染むか)といった観点で考えるというモデルから、例えば、医療は直接提供の方がいいとか、ごみ収集は市場化の方がいいといった話をした。このテーマの関連ではスペースシャトル、チャレンジャー号の事故に関するドキュメンタリー動画を事前に見て、NASAはどうするべきだったのかといった議論をしたりした。

そこから、具体的なテーマとして、教育・医療が取り上げられて、例えば、LSEの教授であるニコラス・バーが2000年代に提案した大学教育に関する学生ローン政策が経済学的にどう優れていて、しかし、実際の政策では何が問題となったのか、についてプレゼンを行った。医療に関しては、特に多く時間が割かれて、いわゆるベバリッジ型とビスマルク型といった提供体制改革だけでなく、アメリカとカナダの比較から提供体制よりも保険体制の方が医療費に与える影響が大きいという示唆が紹介されたり、興味深かった。

終盤はヒエラルキー(make)でもマーケット(buy)でもない第3の手法としてのネットワークについて紹介があったが、正直、このあたりのトピックは十分に理解できたとは言えない。

 

評価はターム中のグループプレゼン(20%)、ターム中の2000語以内のレポート(30%)、そして最後に3000語のエッセイ(50%)。レポートは任意の国の大臣に政策を提案することを目的として、主な提案内容を紹介するパート1とそれに関する想定される質問・反対意見に対応するパート2の2部構成にすることが求められ、私は日本の医療提供体制改革に関して書いた。

エッセイは、reading weekの間にプランを提出してそのコメントを踏まえて書くという形だったが、何度も強調されたのは、叙述的ではなく分析的であること、基本的に2つ以上のことを比較して、なぜこちらはうまくいったのにこちらはそうではなかったのか、という形式にするようにということだった。個人的に、エッセイの方は、どういう軸で比較するかぎりぎりまでうまく整理できず困ったが、最終的には日本の介護保険制度導入時に行われた市場原理の導入とイングランドで1990年代に行われた介護の市場原理導入、方や市場規模を拡大することに成功したがコスト管理に苦労しており、方やコスト管理は成功しているが市場規模が小さいことの理由を分析することにした。

このエッセイだけ、まだフィードバックが来ていないので、ちょっとドキドキしている。

 

評価対象の課題も多く、また教授もなかなか厳しい(ゼミの間にいろんな学生を指名して発言させるのはいいのだが、的外れなことを言っていると発言を途中で遮って他の学生を指名するなど)が、内容的には非常に面白く、個人的には履修を強く勧めたい科目の一つとなった。

58 子どもの学校教育(宗教系学校)

以前書いた通り、長子は昨年からレセプションクラスで学校教育を受けている。
フォニックスやアルファベットは一通り習い終わり、たどたどしながらも短い文章を読んだり書いたりできるぐらいにはなっている。

 

ところで、長子の通っている学校はカトリック系の学校だ。家から一番近いし、私自身、日本で通っていた幼稚園はカトリック系だったので、まぁ別にいいかというぐらいの気持ちで決めた。申し込みの時点で、本校はカトリック精神に則って教育を行うのでそのことを承知の上で申し込むようにと念押しがあったり、定員に地域枠と教会枠があったりと申し込む前から結構本格的そうだなと思っていたが、実際に学校が始まるとそれをすぐに実感することになった。

 

まず宿題。他の学校では毎日簡単な宿題が出ているという話も聞く一方で、学期開始直後からしばらく全く日々の宿題がなかったが、最初にあった宿題がRE(regional education)の宿題で「神の創造物について学ぼう」と題し、葉っぱや鳥の羽、果物の種など指定された身の回りのものを集めて持って来るというものだった。神の創造物という表現にかなり戸惑ったのをいまでもよく覚えている。
当然、クリスマスは一大イベントで、1か月前ぐらいから讃美歌の練習をしたり、Nativity(キリスト降誕)について習ったりしていて、家でもよく話をしていた。

 

寝かしつけの際、消灯した後、急に「Godが世界を作ったんだよ」と言い出したときはぎょっとしたが、個人的にはキリスト教についてしっかり習うのは悪くないなと感じている。
というのも、観光で大聖堂など宗教施設に足を運ぶ際、去年までは露骨に退屈がってつまんない、早く次に行こうと不満たらたらだった長子が、ここ最近ステンドグラスを見て「jesus died on the cross」だねなど学校で習ったものを見つるなど、本人なりの楽しみ方を見つけているからだ。

 

また、宗教教育を行っている一方で、科学的なことはそれはそれできちんと教えているようで、サマータームには太陽系を習い、今日はDwarf planet準惑星)について習ったよと報告してくれている。習っていると言ってもyoutubeで動画を見るぐらいのようで、どの程度理解しているかは若干怪しいが、準惑星なんて言葉、日本の小学校1年生はまず知らないだろうから、進んでいると言えば進んでいる。ちなみに、receptionで太陽系について習うのは他の学校でも同じようで、個人的には地動説を早い段階できちんと教えるのが目的ではないかと邪推している。

動画はこういったものを教室で見ているらしい。やたらと耳に残る。

The Dwarf Planet Song - YouTube

 

それと、カトリックと関係しているかは不明だが、ここ最近は手話(British Sign Language)を定期的に習っているようで、家でも披露してくれる。アルファベットとか他にもっと教育的なことをしてくれてもいいんじゃないかという気もするが、日本だと習う機会はあまりないだろうし、これも個人的にはいいことだと感じている。実際、先日街中で手話を使っている人を見かける機会があり、長子も「あの子(長子は大人も子どもも区別なくあの子と呼ぶ)、Sign Language使ってるね」と言っていた。

 

留学期間中という限られた間だけで日本に帰れば普通の学校教育を受けさせるという前提があるからという部分は大きいが、キリスト教・手話と日本ではあまり機会がないだろうことに触れる機会があるのは、子どもの見聞を広める意味で悪くないと感じている。